和紙のQ&A:日本最古の和紙は、いつどこで作られたものですか?

*****日本の和紙について分からない事にお答えする「和紙のQ&A」*****

 

本美濃紙

 

「和紙」と聞くと、日本の伝統文化を象徴するような、古くからある素材というイメージが浮かびます。では、日本最古の和紙は一体いつ、どこで作られたものなのでしょうか?今回は、日本最古の和紙の一つである美濃和紙にスポットをあてて、その歴史や特徴をご紹介します。

 

現存する日本最古の和紙

 

現存する日本最古の和紙は、奈良の正倉院に収蔵されている702年(大宝2年)の戸籍用紙です。この戸籍用紙は、美濃(みの/岐阜県南部)、筑前(ちくぜん/福岡県西北部)、豊前(ぶぜん/福岡県東半部と大分県北部)の3国で作られており、特に美濃で作られた和紙は、漉きムラが少なく紙質が一番優れていたとされています。

 

美濃和紙の歴史

 

美濃和紙は、戸籍用紙の存在からもわかるように、非常に長い歴史を持つ日本の伝統工芸品です。良質な原料と清流に恵まれた岐阜県美濃地方では、1300年以上前から和紙作りが行われてきました。

近代以降は、ウィーンやパリ万博などでの紹介を通じて、その名が世界に広まりました。特に、原料や製法が厳格に定められた「本美濃紙」の製作技術は、1969年に国の重要無形文化財、1985年には国の伝統的工芸品、そして2014年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、その高い技術が評価されています。

 

  • 奈良時代
    経典の写経や家系図などの政府の記録に用いられました。

 

  • 平安時代以降
    紙の需要が高まり、美濃和紙は高品質な紙として広く利用されるようになりました。

 

  • 江戸時代
    高級障子紙として最上の評価を受け「美濃判」という規格も生まれました。

 

美濃和紙の特徴

 

美濃和紙は、薄くても丈夫で、ムラのない均一な美しさが特徴です。その秘密は、良質な原料と清流、そして独特の漉き方にあります。美濃の手漉き職人は、紙を漉く際に、縦だけでなく横方向にも揺らし、繊維をより密に絡ませます。古くから障子紙として用いられることの多かった美濃和紙は、光を透かすとその美しさが際立ちます。現在では、伝統的な製法を守りながら、現代の生活に合う様々な製品が作られています。

 

美濃和紙と本美濃紙の違い

 

「美濃和紙」は、岐阜県美濃地方で作られる和紙の総称です。機械漉きのものも含め、広範囲に用いられます。一方「本美濃紙」は、重要無形文化財に指定された材料や道具を用い、選ばれた職人だけが漉くことを許された、美濃和紙の最高峰の手漉き和紙です。

かつて「美濃和紙」と言えば、伝統的な手漉き和紙を指していました。しかし、木材パルプを混ぜた和紙が増えたことで、区別する必要性が生まれ「本美濃紙」という名称を定めて、呼ばれるようになりました。

 

美濃和紙から学ぶ

 

美濃和紙は「本美濃紙」という厳格な基準を設けることで、伝統的な製法を守り続けてきました。しかし日本全体で見ると、和紙が広い範囲で定義されるようになり、各産地の本物の手漉き和紙の価値が十分に評価されていないのが現状です。一度広まった定義を変えることは容易ではありませんが、各産地が美濃和紙のように厳格な基準を設けることで、より多くの消費者に本物の手漉き和紙の魅力を知ってもらうことができるのではないでしょうか。弊社も微力ながら、今後も正しい情報をお客様にお伝えし、本物の和紙文化の継承に貢献していきます。

 

 

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著者/この記事を書いた人

浅倉紙業株式会社(Asakurashigyo Corporation)
浅倉敏之

石川県金沢市にある明治30年(1897年)創業の和紙専門店です。自社工房で制作する染色・創作和紙をはじめ、和紙インテリア製品や和紙小物など、幅広い和紙製品を取り扱っています。お客様のご要望に合わせたオリジナル製品の企画・制作も承っております。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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土佐和紙(高知県)をはじめとした国産和紙を使用して作られた花や葉。
和紙の良し悪しが仕上がりに影響するため、素材作りから染色、加工、アレンジメントに至るまで全て自社一貫制作でおこなっています。和紙の花は枯れる心配がなく、いつまでも美しく咲き続けます。

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